【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第29章 赤い糸 ♪
そのとき、わたしはハッと零のことを思い出した。
「好きだよ…」そう言って、抱きしめてくれた零を思い出した。
わたしが人生で一番死にそうだった時に、そばにいて手を握ってくれて、かげがえない愛をくれたのは、零だ。
「…離して…」
突然冷静になって、赤井さんにそう言った。
赤井さんは、逆に抱き締める力をいっそう強くしながら言う。
「離さない」
胸がぎゅっとなった。
性懲りも無くまだ、赤井さんにときめいてしまう。
「…は…なして…!!」
わたしは思わず、赤井さんの身体をグッと離した。
わたしは、何をしようとしてたの…
零を裏切って、赤井さんとあっさり復縁なんて、出来るわけない。
それに、わたしが今好きなのは、降谷零でしょ?
「…もう、遅いよ」
その言葉が口をついて出た。
「わたしはもう…安室さんと…」
それだけ言って、続きの言葉が出てこない。
どうして、安室さんのことが好きだから無理。と言えないの?
赤井さんのことはもう好きじゃないって言えない。
赤井さんは、寂しそうに笑った。
「そうだな…
…忘れてくれ。俺、あっちにいるから。」
そう言って赤井さんは、暖炉のそばから立ち上がり、向こうに座った。
まるで、わたしから距離を取るように。
どうすればよかったの…
わたしはどうしたいの?
そう思ったけど、すぐにわたしの中の天使が答えた。
あなたがどうしたいかなんて、どうでもいい。
零を、大切にするって決めたんじゃないの?
そう…だよ。決めたのに…
決めたのに、たった今赤井さんを拒絶したこと、もう後悔してる。
わたしは暖炉の前で、三角座りをしておでこを膝につけた。
赤井さんの唇の感覚が、消えない
赤井さんの、好きだと言った声が、消えない
赤井さんへ向かっていく気持ちが、消えない