第29章 赤い糸　♪

瞬きをすると、涙が溢れた。
目を閉じる隙すら与えてくれず、節目がちに赤井さんの顔を見た。

このまま、抱きしめ返して、わたしもずっと赤井さんが好きだと言えばいいの…？

今度こそ、ずっと一緒にいてくれるの…？


タバコの味のキスが苦くてせつなくて
わたしの目からまた違う涙が溢れた。

赤井さんがゆっくりと唇を離して、またわたしの名前を呼ぶ。


「サラ…お前が好きだ」


そしてわたしの頬を両手で覆って、また角度を変えてキスが降ってくる。

二度目のキス。
どうしても、拒めない…

赤井さんは、わたしの髪を撫でたあと、ギュッと力いっぱい、わたしを抱きしめた。


「サラ…好きだ。」


何度も何度も好きと伝えられるたびに、わたしの心臓がバクバクと大きい音を立てる。


「俺は、お前を取り戻したい。
もう一度、俺のそばにいてくれ…」


これは夢…？

あの日からずっと、何度もこんな夢を見た。
けれど目が覚めるとやっぱり赤井さんは隣にいなかった。
今も、また夢なの？

そう思いながら、赤井さんの背中に震える手を回した。

広い背中。
わたしの腕が覆えないほど大きな身体。

現実だ…赤井さんが、ここにいる。

やり直せる…？
またあの頃みたいに、愛し合える？


わたしも…赤井さんのことが…ずっと…