第29章 赤い糸　♪

そのzippoは、わたしがプレゼントしたものだった。


なんで、まだ持ってるの？
捨ててなかったの…？

違う。深い意味なんてないから。
いちいちドキドキしないで…わたしの心臓。


そう必死で平静を装うわたしの隣で、火がついた暖炉の前で赤井さんが上着を脱いで、乾かすために暖炉の前の椅子にかけた。

そして、その下に来ていたシャツのボタンを外す。
赤井さんの上半身が徐々に露わになってきて、わたしは思わず顔を背けた。

何度も見たはずの、赤井さんの裸。
前は真っ直ぐに見つめていたのに。


「ほら。これ着ろ」


そう言って赤井さんは脱いだシャツを渡してくる。
シャツは全然濡れてなくて、思わず赤井さんを見た。


「上着が撥水加工だったからな。
お前も今着ている服を脱いで、乾かしている間これを着てろ。
後ろ向いてるから」

「で…でも、赤井さん寒いでしょ？」

「問題ない。ほら。」


そう言って渡してくるシャツを、戸惑いながら受け取ると、赤井さんは後ろを向いた。

何よ…前なら、赤井さんが脱がしていたくせに。
後ろなんて、向くような人じゃなかったのに。