【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第29章 赤い糸 ♪
「い、いったー…」
幸い、足から滑り落ちたおかげで何とか生きてる。
これ、頭から落ちたら死んでたな…と、崖の上を見上げてゾッとした。
右手には、しっかりと巾着が握られていて、震える手でそれをあけると、ネックレスもちゃんと無事だった。
ホッと胸を撫で下ろし、早く戻らないと。と立ち上がろうとした瞬間、足首に激痛が走った。
「いっった!」
見ると、右の足首が尋常じゃないぐらい腫れている。
これじゃ歩けない…
「すみませんー!
誰かいませんかー!?」
そう言って声を張り上げるけど、誰からも返事はない。
慌ててスマホを取り出そうとするが、どうやら落ちたはずみでどこかに落としてしまったらしい。
仕方ない。
きっとわたしがいない事は零が気付くだろう。
そのうち、探しに来てくれる…きっと。
そう思ってわたしは、下手に動いたり叫んだりするのをやめて、崖下すぐの木陰に膝を抱えて座った。
そしてしばらくすると、ポツリ…ポツリと上から雫が降ってくる。
「最悪すぎる…」
上を見上げてそうつぶやいた瞬間、滝のような雨が頭上から降り注いだ。
木の下にいても、ほとんどダイレクトにわたしの体を濡らしてくる。
バチが当たったんだ。
こんなの、いつまでも大事に持っていたバチが。
零が、いつもいつもあんなにわたしのことを大切にしてくれているのに、それを裏切るようなものだ。
わたしは座り込んだまま空を見上げた。
このまま、雷が鳴ったらどうしよう。
雷が鳴ったら思い出してしまう。
たった一度、最初で最後、赤井さんに、愛してると言われたあの夜。
その記憶で塗り替えてくれたのに、また悲しい記憶になっちゃったよ。
わたしの顔にも雨が当たって、涙が溢れているのか、雨に濡れてるだけなのか、自分でもわからなかった。