第28章 最愛　♪

ホテルの空調設備を管理していて、ボイラー室特有の騒音が鳴り響く。

幸い、その騒音でわたしの息遣いも足音もかき消される。
ゆっくり奥へと進んでいくと、遠くに人影が見えた。


「見つけた…」


誰かの後ろ姿を視界に捉えたわたしは、思いっきり後ろから飛び蹴りを繰り出した。

その人は、紙一重でわたしを避けるとわたしの飛びかかってくるスピードを利用してわたしをいなした。

只者じゃない。

瞬時にそう思いながら、わたしはそいつの足元を引っ掛けようとするがまた紙一重でかわされ、カウンターで手刀が繰り出される。

今度はこっちが、その手刀を紙一重でよけると、わたしたちは、ほぼ同時に持っていたハンドガンを抜き、お互いに突きつけた。


ジャカ…


次の瞬間、わたしは自分の目を大きく見開いた。
まさか、どうして…？