第28章 最愛　♪

安室side


「これが、このホテルの見取り図だ。」


ホテルの前に到着し、駐車場に車を停めると、そう言ってサラにタブレットでデータを見せた。


「あとで君のスマホに送っておくよ。」

「了解。零たちは正面から入るの？」

「あぁ。公安は何組かに分かれて正面、裏口、通用口から捜査開始だ。
怪しい人物がいないか常に無線で連絡を取り合うことになっている。」

「なるほど。
じゃあわたしは、この見取り図に書かれてる通気口に忍び込んで中に入るね」

さすが、あのジンが認めたスパイだ。
僕が指示しなくても、説明しなくても、自分がどう行動すべきかわかっている。

けれど、それが逆に心配だ…。


「この駐車場から通気口に入れるから。
…くれぐれも、勝手な行動はしないように。
常に状況を報告すること。
いいな？」

「ラジャ！」


サラはビッと敬礼して、車から出ていこうとした。
それを僕は咄嗟にサラの腕を掴んで止めた。


「？零？」


どうしてだろう。

本当に無意識だったんだが、なんとなくサラがそのままどこかに行ってしまいそうな気がした。