【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第27章 気付かれないように ☆ ♪
ぼーっと夜空を見上げていると、自室に誰か入ってきた。
「赤井くん」
「優作さん」
この家の家主、工藤優作氏が入ってきて、俺は咄嗟にタバコの火を消そうとしたが、優作さんはそのままでいいよ。とそれを静止した。
俺はまたバルコニーの外へ向き直ると、真っ直ぐにタバコの煙を吐いた。
白い煙が揺れて、ゆっくり夜空に消えていく。
優作さんは俺の少し後ろにあるテラスチェアに腰をかけると、俺に話しかけた。
「…妻が、赤井くんの元気がないって騒いでいてね」
「…気のせいですよ。」
「そうか…」
こんなふうに、いろんな人に知らず知らずに心配をかけているのか。
以前の俺もそうだった。
宮野明美が死んで、もともと少なかった俺の口数はグッと減り、仕事の必要最低限のことしか言葉を発しない。
あとはずっと自分の中で自問自答し続けていた。
「赤井くん。
私は最近思うんだ。
大人になればなるほど、自分の気持ちとは全く逆の行動をしなければいけない時が増えると」
俺は何も言わずにタバコに口をつけた。
「サラくんを手放したこと、後悔しているかね?」
あぁ。バレていたのか。
そんな目で優作さんを見ると、彼は笑って
「妻には内緒にしているよ。大騒ぎしそうだからね」
そう言って笑った。