【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第27章 気付かれないように ☆ ♪
俺は咄嗟にまたサラの腕を掴んだ。
サラは再び驚いてこちらを見た。
お前が好きだ。
そう言いたいのに、言う資格はない。
頭で考えるより、身体が先に動いてしまい、俺は必死にサラの腕を掴んだ言い訳を考えた。
「…なに?」
サラは、とても切ない顔をして俺を見た。
無茶苦茶だな、俺は。
あんなに傷付けて捨てたくせに。
「いや…足が痛いなら、車まで送る」
必死に探した言い訳がそれだ。
サラは少し黙った後、必死に笑って言った。
「平気だよ。…ありがとう」
そう言われるともう食い下がることはできず、俺は静かにサラの腕を離した。
「…じゃあ」
そう言ってサラは俺の横を通り過ぎていく。
またね。
すら、言えない俺たちの今。
俺は今、自分が沖矢昴だと言うことを忘れていた。
それほど、俺はサラと少しでも言葉を交わしたくて必死だった。
サラとすれ違ってすぐ、サラを呼ぶ声が聞こえた。
安室くんが戻ってこないサラを心配して探しに来たらしい。
「戻ってこないから心配したよ」
「あ、ごめん。
足が痛くてちゃんと歩けなくて」
「どれ?」
そう言いながら、安室くんは躊躇なくサラの足に触れる。
かつて俺がしていたみたいに。
安室くんは、サラのヒールをその場で脱がせると、自分の膝にサラの足を乗せた。
「絆創膏貼るから」
「ご、ごめんね。
零の膝にこんな…足乗せちゃって」
「そんなの気にしなくていいよ」
俺はそんな2人のやりとりを、少し遠くから見ていた。
彼なら、サラを幸せにしてくれるだろう。
立場的に、普通の生活ではないかもしれないが、それでも俺のそばにいるよりずっと安全だ。
そう思うのに。
今更、遅い。そう思うのに。
俺はやり場のない気持ちを押し殺して、足早にホテルを出ようとした。