【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第27章 気付かれないように ☆ ♪
会場に向かう廊下を歩いていると、前から沖矢さんがレストルームの方向へ歩いてくるのが見えた。
すこしずつ、すこしずつ近づいてくる距離に、内心心臓が壊れそうなほど動いた。
ダメ。1対1は流石にキツい。
そう思いながら、下を向いて前に進むと、ゆっくりとすれ違った。
すれ違う瞬間がスローモーションに思えて、思わず息を止めてしまった。
もう嫌だ。心臓に悪い…
そう思って、はぁ…とため息をついてまた歩き出そうとした時、後ろから腕を掴まれた。
「サラ」
驚いて振り返ると、沖矢さんがわたしの腕を掴んで、名前を呼んだ。
名前、呼ばれたのいつぶりだろう…
突然のことに、びっくりして目を見開いて沖矢さんを見た。
息が、止まるかと思った。
腕が、沖矢さんに掴まれたところから熱くて溶けそうだ。
まるで麻痺したみたいに、全身が痺れる。
わたしは一生懸命に冷静を取り繕って、聞いた。
「何?どうしたの?」
バレてない?わたしが激しく動揺していること。
お願いだからバレないで…
「…足、どうした?引きずっているが」
赤井さんの口調で、そう聞いてくる沖矢さんに、泣きそうになる。
どうしてそんなこと気づくの。
わたしのこと、邪魔だって言ったくせに。
沖矢さんなのに赤井さんの口調で話さないで。
特別みたいな扱い、しないで。
「…靴ズレしてるだけ…」
「…そうか。
…悪かったな。呼び止めて」
そう言って沖矢さんは、ゆっくりと掴んだわたしの腕を離した。
離される時、わたしはすごく切ない気持ちになった。
まるであの観覧車で泣いた時みたいな気持ち。
「ううん…。…じゃあ」
それ以上何も言えなくて、わたしはゆっくりとまた歩き出した。