【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第26章 アップルパイ ☆ ♪
赤井side
工藤邸の自室。窓を開けてタバコを吸った。
流石に冬の夜は冷えるな。
あの観覧車も、12月末で寒かった。
あの時、サラの手すら握ってやらなかった。
今日偶然会ったサラは、元気そうに笑っていて安心した。
これでよかったはずなのに、ふとした瞬間にサラのことが思い浮かぶ。
俺が望んでいるのは、サラが笑顔でいること。
隣に俺がいられなくてもいい。
サラが幸せに暮らしてくれたらそれでいい。
そう思って別れたはずなのに、生活に支障をきたしているのは俺の方だ。
悪夢のように、サラと幸せだった頃の夢を見る。
サラから貰ったzippoは捨てられないどころかいつも肌身離さず持ち歩いている。
有希子さんが作る美味しい料理を食べると、サラが作ったヘタクソな料理が恋しくなる。
愛した分だけ、弱さになる。
今更、気付いても遅いのに、サラがどれだけ自分の生活の大部分を占めていたか、失って初めてわかった。
結局俺は、サラを守るためとか言っておきながら、本当は逃げていたんだ。
自分のせいでサラが危険な目にあう恐怖から目を背けて、逃げた。
もし戻れるとしたら、どちらかがいい。
あの日に戻って、クリスマスをやり直したい。
ちゃんと水族館でサラの話を聞いてやって、
プラネタリウムで手を繋いで、
髪を撫でて不意をついてキスをして、
観覧車で抱きしめてキスをして、
晩飯はちょっといい店に連れて行ってやって、
そこでプレゼントを渡して、
ずっと一緒にいて欲しいと伝える。
もしくは、サラに出会った日に戻って、サラに出会う事をやめたい。
どっちも叶うはずもなく、俺はタバコを燻らした。
行き場のない想いだけが雪みたいに積もって、もう身動きが取れない。