第26章 アップルパイ　☆ ♪

口付けて、ゆっくり離すと、わたしたちの口から白い息が漏れた。


「好きだよ」


零が優しい目をしてそう言う。

わたしはこの数ヶ月、ずっと思ってた。
所詮恋なんて、燃え上がったと思ったら、壊れて、燃え尽きて、終わりを迎えるって。

だけど、零は何度もわたしの手を引いてくれた。

甘いものを分け合って食べたり、他愛無い冗談を言い合ったり、まるでずっと昔から一緒にいるみたいに気が合う。

また、恋が始まるのを目の当たりにした。
この人が、わたしの恋人。

わたしも、零の目をじっと見ながら、初めて伝えた。


「…わたしも。好き」

「本当に？」


零はびっくりして目を見開きながら、わたしに聞き返した。


「ほんと。零が好きだよ」

「……もう…」


零は堪らずわたしを抱き上げた。
突然足が宙に浮いたわたしは驚いて零を見た。


「大好きだ」


零はそう言ってまたわたしの目を見つめる。
わたしは、返事をする代わりに零にキスをした。

冬なのに、暖かい。そんな不思議な夜だった。