【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第24章 思い出せなくなるその日まで ♪
目覚めは最悪だった。
ベッドの上で身体を起こし、片手で頭を支えながら、ため息をついた。
別れた後に、それも俺からこっぴどく振った後にこんな夢を見るとはな。
あの日、夕枯れのオレンジの中、俺はサラを手放した。
あれから何日経ったかわからないが、サラがいなくなった日々は驚くほどつまらない。
朝起きても1日を生き抜く活力すら湧いてこない。
俺は、サラと出会うまでどうやって生きてきたんだろうな。
夢の中のサラは変わらずに笑っていて、俺はその笑顔が好きだ。今も。
その笑顔はもう隣で見ることはできないが、それは自分への罰だと思って受け入れるしかない。
変装をしようと部屋を出た俺は有希子さんとバッタリ廊下で鉢合わせた。
「秀ちゃん。…こないだから元気ないけど、大丈夫?」
「ええ。少し寝不足なだけですよ」
そう言いながら、俺は顔を洗おうと1階へ階段を降りた。
ちょうど博士に返すものがあり、俺は沖矢昴に変装すると、隣の阿笠邸のチャイムを押した。
中にいたのは阿笠博士、ボウヤ、灰原哀、そして何故かジョディだ。
「あれ?昴さん。」
「ちょっと!あなた自分の彼女ぐらいちゃんと首輪繋いでおきなさいよ!」
灰原哀が、俺にすごい剣幕で食ってかかる。
この間の比護選手の一件が、相当頭にきているのか。
それにしても話が見えなくて、俺は首をかしげた。
「なんの話です?」
「あ…いや、サラさんが安室さんと親しそうに歩いてたってジョディ先生が…」
ボウヤが俺に気を遣いながらそう言う。
そういうことか。
けれど俺にはもう何も言う権利はない。
「そうですか。
でも、僕にはもう関係のない事ですよ。
…サラとは、別れましたから」
「え…?」
その場にいた全員が、俺にまさか…と言う目を向ける。
「ちょ…ちょっと待ってよ。どうして?」
ジョディが俺の両肩を押さえながらすごい剣幕で聞いてくる。
そんな態度をとったら、灰原哀に俺が赤井秀一って気づかれるだろ…
俺はジョディの手を自分の肩から外して言う。
「価値観の相違です」
そんな、恋人が別れたり、離婚をするときの定型文みたいな理由を言って、俺は借りていたものを机の上に置いて、阿笠博士の家を立ち去った。