【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第23章 さよならとたった一言で
観覧車が徐々に上に上がっていくのを、赤井さんは頬杖をつきながら窓の外の景色を見ている。
思えば、こんなふうに密室で2人きりになるの、久しぶりだ。
「…前に、一緒に乗ったよね。観覧車。
トロピカルランドに行った時。」
「…あぁ。」
「あの時はお昼だったけど、夕方の観覧車も綺麗でいいね」
そう言いながらわたしも窓の外を眺めた。
夕枯れの街並みが綺麗に見えたけど、どこか怖くも見えた。
燃えてるみたいなオレンジ色。
街も、わたしたちも全部まるごと飲み込んでしまいそうで、怖くて思わず目を逸らした。
窓の景色を見るふりをして横目で赤井さんを覗いてみる。
赤井さんは、ずっとずっと遠くを見ていた。
ねぇ、どうしてわたしの方を見てくれないの?
今日はキスもしてない。
2人きりになって、ここには他に誰もいないのに。
ふと、斜め下のゴンドラを見ると、乗っているカップルがキスをしている。
前に観覧車に乗ったとき、わたしと沖矢さんもあんな風にキスをした。
あの時はまだ、赤井さんの気持ちがわからなくて、自分の気持ちにも自信が持てなくて、自分たちの気持ちよりずっとはやく、身体が動いていたよね。
なのに今は、手を握ってすらいない。
「ねぇ、隣に行ってもいい?」
「…いや。このままがいい」
嫌な予感は朝からずっとしてた。
明らかにいつもと違う空気感。
わたしが近づこうとすればするほど、するりと手のひらからこぼれ落ちていく。