【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第20章 No way to say ☆ ♪
パンが焼き終わるまで、洗面所で身支度を整え、トースターの音が鳴ったころ、わたしのスマホが鳴った。
「誰?こんな朝早く」
そう思って着信画面を見ると
赤井秀一
と表示されている。
「…もしもし」
「おはよう」
声を聞いただけで泣きそうになるなんて、わたしはつくづくバカな女だ。
「おはよ」
「…もしかしてもう起きていたか?」
「うん。ちょうど朝ごはんの支度してたよ」
「そうか…」
きっと赤井さんは、わたしが寝坊しないように電話をかけてくれたんだ。
こんなことなら、ギリギリまで寝ておけばよかった。
隣に居ないことなんて、いちいち確認するんじゃなかった。
「バイト何時までだ?」
「夕方までだけど…」
「なら今日の夜、外に飯でも食べにいくか」
行きたい!と思わず返事をしようとした瞬間、別のわたしがストップをかけた。
こんな風にわたしのこと心配ばかりしてちゃ、赤井さんは本来の仕事に集中できない。
全部終わったら、また一緒に暮らせるんだから、今はちゃんと我慢して自立しなきゃ。
「ご…めん。今日は梓さんと約束してるの」
咄嗟に、嘘をついてしまった。
「そうか。なら仕方ないな。また夜電話するよ」
「うん。じゃあね」
そう言って電話が切れた。
今までは、会う約束なんてしなくてもよかった。
会えない日はなかったから。
でもこれからは違うんだ。
ちゃんと、いつ会おうって約束しないと会えない。
大丈夫。こんなのすぐに慣れる。
そう自分何とも言い聞かせながら電話を切った後、しばらくぼーっとしてしまって、気付いたらパンが焦げてた。