【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第3章 甘い罠 ☆
すっかり日が落ち、今はパレードを見るためにレジャーシートを広げて座って待っている。
苦手だなと思っていた子供達とも打ち解けて、案外わたし子供苦手じゃなかったのかも。そんな風にすら思うようになってきた。
楽しそうにはしゃぐ子供達や、ぼーっと周りの幸せそうな人たちを眺めながら思った。
まだ、夢の中にいるみたいだ と。
暗闇の中で生きてきたわたしにとって、この空間は温かすぎて慣れない。
しばらくすると、沖矢さんが飲み物を買ってきて
みんなに好きなものを。と手渡した。
その中からミルクティーを受け取り、口をつけると沖矢さんがわたしの隣に座った。
「今日は来てくれてありがとうございました。
僕ひとりでは、5人の面倒は見切れなかった」
「いえ。」
そう言って、続きの言葉が見つからず、
またぼーっと周りの人を眺める。
「どうしました?」
「…なんだか夢の中にいるみたいで…。
ここに来てる人たちは、当たり前みたいに人と手をつないで、笑い合って、楽しそうで。
わたしが今まで生きてきた世界と全然違うから。」
そう言うと、しばらく黙った沖矢さんの手がわたしの手に重なった。
「これから、こっちを現実にしていけばいいんじゃないですか?」
「そうだね…」
全然自信がなくて、わたしは力なく笑った。
いつか、過去の方が悪夢だったのだと思える日が来るんだろうか。
そんなわたしの心を見透かすかのように、沖矢さんは重ねた手をぎゅっと握った。
その時、パレードが始まった。
「わー!!始まった!」
「どれどれ?」
みんなの視線がパレードのフロートに集中した瞬間、沖矢さんが握っていたわたしの手を引いて唇を重ねた。
「…っ。」
一度唇を離して見つめ合った後、
もう一度しようとする沖矢さんを静止する。
「待って。みんな見てる」
「パレードしか見てませんよ」
そう言いながら、また2人の唇が重なった。
キスをしながら、この幸せが当たり前になればいいのに、そう強く願った。