【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第18章 Call my name
比護side
最初は特に何も思っていなかった。
ひったくり犯の胸ぐらを掴んで詰め寄る姿を見て、ずいぶん威勢の良い子だなあと感心していた。
そして話してみると、俺のことは全く知らないようで、比護隆佑と書いた連絡先を渡しても、少しもピンと来ていない様子だった。
俺にはそれが新鮮に思えた。
いつも俺の周りには俺のことを知っている人達が集まって来ているから。
もう会うこともないだろうと思っていたけど、こんな形で再会して、結構喜んでる自分に気づいた瞬間、あの時連絡先を書いて渡した紙を何食わぬ顔でお返しされた。
面白い子だな。と更に興味が湧いて来た。
ひょんなことから撮影を一緒にすることになり、彼女の手を繋ぐと心臓がドクンと脈打った。
試合前のあの緊張感に少し似ているかもしれない。
そして、名前で呼び合うことになったとき、俺は必死にバレないようにしていたけど本当は物凄い照れていた。
彼女の肩を抱くと、思っていたより何倍も華奢だ。
こういう雑誌の撮影は、あまり好きではなかった。
撮影している暇があれば練習したいし。
そう思っていたけど、今日はそこまで悪くなかったかもな。
撮影が終わり、サラに連絡先を教えてと言うと、少し渋ったあとに教えてくれた。
今はサッカーが恋人で、恋愛なんてしている暇はない。
そう思うのに、サラともうこれきり会えなくなるのが何となく嫌で、つい関係の糸を繋いでいたくなった。
そうして去り際、サラは俺を見て笑って言った。
「じゃあ、比護さん。またね。
モデル、がんばって」
比護さんに呼び方戻ってるし
モデルのチャラいやつと思われてそうだし
その笑顔、反則級に可愛いし
俺はまいったな。と笑いながら、サラに手をふり返した。