【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第2章 嘆きのキス
台風が本格的に近づいてきた。
雨風が強く、外では木が今にも倒れそうなぐらい揺れている。
雨風がうるさくなって、眠れなくなる前に寝ちゃおう。
そう思って早めにベッドに入った。
入ってしばらく目を閉じていたが、妙に喉が渇いて眠れない。
仕方なく身体を起こして、キッチンでアップルジュースを飲んだ。
雨…嫌な記憶が蘇る。
わたしの人生で一番嫌な記憶。
思い出すな。そう自分に言い聞かせ、また自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていた時
フッと家の電気が消えた。
「えっ??」
慌てて外を見ると、外の街灯も消えている。
どうやら停電したようだ。
その時、
ガラガラガラガラ ピカッッッ
ドーーーン
大きな雷が、すぐ近くに落ちた音がして、稲光が目の前を眩しく照らす。
その瞬間、わたしの頭は真っ白になった。
思い出したくない記憶
雷雨の夜
血の匂い
冷たくなった人の手
少しずつ近づいてくる足音
いろんな場面がフラッシュバックして、
わたしはその場に座り込み、激しく取り乱した。
「いやっ!!!やだ…やめて…助けて!!」
呼吸が、上手くできない。
気管が狭くなり、ヒューヒューと呼吸が細くなり
息が苦しい。
「た…すけ…」
その時、後ろから突然抱きしめられた。
「いやぁあ!!」
驚いて暴れるわたしを力強く静止し、
上から声が降ってくる。
「サラ、しっかりしろ。どうした?」
薄れゆく意識の中、赤井さんだと気づいて、彼の腕にしがみつきながら、必死に訴えた。
「た…すけて…ッ…苦しい…」
過呼吸になっているわたしの背中を少しさすった後、赤井さんはわたしの頰を両手で覆い、唇を自分の唇で塞いだ。
ふーっと息を送り込まれ、虚な目で赤井さんを見ると節目がちな彼の目があった。
飛びそうな意識の中、ほんの少しタバコの味がした。
徐々に呼吸が落ち着いてきて、わたしは赤井さんの首に腕を回してギュッとしがみついた。
赤井さんは、わたしの呼吸がちゃんと落ち着くまで、
その場でずっと抱きしめて髪を撫でてくれた。
ああ、わたしこの人のこと、好きだ…
そう思ってまた、ぎゅっと彼の首に回した腕の力を強めた。