【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第12章 BlueDaisy ♪
3つ目は何だろう。
考えられる可能性はひとつ。
沖矢昴と赤井秀一は同一人物でしょう?
この質問だ。
もちろん、聞かれてもわたしは違うと言うけれど、聞いてくるってことは何か確信があるわけだし、わたしが否定しても手遅れな気がする。
色々な可能性を頭の中で巡らせていると、いつのまにか阿笠博士の家の前まで車が到着した。
「ほら。着きましたよ。」
「あ、ありがとう…あの、3つ目は?」
「3つ目は、話というよりお願いなんですが、今日のデートの締めくくりにキス、させてくれませんか?」
一切予想していなかった3つ目の話に、わたしは一瞬時が止まったが、すぐに冷静に対処した。
「イヤです」
「ほっぺたにですよ。」
「…む…ほっぺか…それなら。」
何だかんだ、今日は楽しかったし、バイトも安室さんのおかげで決まったし。頬にキスはアメリカ育ちのわたしに取っては挨拶だから、あまり拒否反応を示さなかった。
「じゃ、目を閉じて」
言われるがまま、わたしは目を閉じる。
けど待って。ほっぺにキスするのに目を閉じる必要ある?
そう思った時には遅くて、安室さんがキスしたのはわたしの唇にだった。
5秒ほど、口づけをしてそっと離されると、わたしは放心状態だ。
「うそつき…」
唇を手で拭いながら、涙を堪えてそう言った。
だって、こんなの赤井さんに何で言えば良いの?
「君のことが、好きだ」
安室さんはわたしの目をじっと見ながらそう言った。
またそんな冗談。って言えないぐらい、真剣な目で。
「…わたしは、沖矢さんが好きなの」
「ああ。だから待っていますよ」
「待たれても困る。だって…」
わたしの気持ちは一生変わらない。
そう言おうとしたのに、安室さんが先手を打ってくる。
「ずっと変わらない気持ちなんて、ありませんよ。
現に、君も沖矢昴も、前は別の人を愛していたんでしょう?」
核心を突かれた言葉に、わたしは返す技を失った。
そうだ。わたしも赤井さんも、忘れられない人がいる。
けれどそれは相手が亡くなっているから、忘れちゃいけない十字架のようなもので。
でも待って。もし相手が今も生きてたら、わたしたちは出会えてすらいない。
きっと赤井さんは、宮野明美さんとずっと一緒にいて、わたしはタクミがわたしのものになる日を一生待ち続ける。