【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第10章 first love ☆
到着したのは来葉峠を過ぎたあたりにある高台。
「降りるぞ」
沖矢さんに言われ車を降りる時、沖矢さんはバッと変装を解いて赤井さんになった。
「だ、大丈夫なの?」
「問題ない。夜で暗いし、ここは人通りも少ないからな。」
そう言ってわたしの肩を抱いて、赤井さんは高台の柵まで私を連れて行った。
その時、目の前に広がった景色にわたしは思わず声を漏らした。
「綺麗…」
東京の夜景がまるで宝石箱のようにキラキラと輝いている。
「マンハッタンの夜景には負けるがな」
そう言う赤井さんの腕に、ぎゅっとしがみつきながらわたしは言う。
「こっちの方が綺麗だよ」
そう言うわたしを赤井さんは髪を撫でながらグッと肩を抱き寄せた。
「ごめんね。さっきの話、赤井さんにとって聞きたい話じゃなかったよね」
「まあ…仕方ないな。今更どうしようもできない。」
「代わりに、宮野明美さんの話、していいよ?」
「え…」
赤井さんが驚いてわたしの顔を見て何か言おうとしたのを、わたしは耐えきれずに止めた。
「や!ダメ!やっぱりやだ!」
「何だそれ」
「だって想像しただけで、嫉妬で吐きそうなのに。
赤井さんの口から聞くなんて無理。耐えられない」
「サラ…」
顔をしかめてそう言いながら耳をふさぐわたしの名前を呼んだ瞬間、赤井さんは肩を回していた手でグッとわたしの肩を引き寄せると、そのまま斜め上からわたしの唇を奪った。
「the past is the past. Right?(過去は過去。だろ?)」
「yeah...please one more time(そうだね…もう一回して?)」
初めて英語で会話を交わして、またキスをした。
そして唇を少し離して、笑い合うとまた唇を重ねる。
ずっとこうしていられたらいいのに。
彼とキスをする時はいつもそんな事を思う。
何度か唇を重ねたあと、赤井さんはわたしの頭をポンポンと撫でて言った。
「そろそろ帰るか」
赤井さんはわたしの肩を抱いたまま、車へ向かい、助手席のドアを開けた。
赤井さんから身体を離し、運転席に乗り込むと、さっきまで寄り添ってたぬくもりが、消えちゃいそうな気がした。
こんなに近くにいるのに運転席と助手席の間の微妙な空間が、何故かとても広く感じた。