第83章 最終話　You belong with me ☆

明らかに噛み合っていないこのやり取りは、覚えがある。

あれは…そうだ。前に日本でサラが妊娠していると俺が勘違いしたとき…

ん…？
妊娠…？


その2文字が頭に浮かんだ次の瞬間、サラが俺の頬に手を添えながらじっと目を見て言った。


「赤ちゃんが出来たの
わたしと、秀一の」


俺は目を見開いて固まった。
そして同時に頭が混乱する。

え…以前は妊娠が誤解で、今回は病気が誤解で…
赤ちゃんが出来た…？

俺たちの？

FBIきっての切れ者だと謳われる赤井秀一。
自分で言うのもなんだが、比較的頭の回転が速い俺のはずが、自分のこと特にサラのことになるとその勘が鈍るらしい。

ようやく思考回路が繋がった俺は、再びサラを思いきり抱きしめる。


「夢じゃないのか…？」


そう言う俺に、サラは少しだけ不安を隠した声で聞いた。


「喜んでくれる？」

「当たり前だ」


そう即答した俺は、サラの頬を手のひらで包んで唇を重ねた。


「愛してるよ。サラ」


そう言うと、サラは幸せそうに笑って俺の頬にキスを返した。


「わたしの方が愛してる！」


そんな可愛い張り合いをして笑うサラは世界一愛しい俺の宝物だ。


命がなくなるのではなく、新しく命が生まれる。

思えば俺は今まで失うことばかりだった気がする。

家族の団欒は遠い昔に無くした。
仕事ばかりでプライベートはほぼ皆無だった。
本気で愛した女を失い、更には赤井秀一という俺自身を殺して生きていた時間もあった。

サラと出会って、誰かと一緒に飯を食う時間が出来た。
仕事ばかりの毎日の中で、安らげる場所が出来た。
愛してるという言葉を使うことが出来た。
一生一緒にいたいと思う気持ちを得た。

そして今、新しい命をこの手で抱く未来を。

全部、お前がくれたかけがえのない宝だ。

明日はどんな未来を一緒に描いていこうか？


お前の居場所は、俺の隣だ。
これからもずっと、永遠に。いつまでも。


＊
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