第81章 恋人じゃなくなった日　☆

これはもう、バカなわたしでも流石にわかる。


「では、こちらへどうぞ。新婦様」


誘導された先にあったのは、建物の隣にあるチャペル。
その大きなドアの前に立ったとき、最後に赤い薔薇と白いかすみ草で仕立てられたブーケを手渡された。


「おめでとうございます。
扉の向こうで、新郎様がお待ちですよ」


ベールダウンされたあと、扉が大きく開いた。

教会の木の匂い
神聖な空気

その先に居たのはタキシードに身を包んだ赤井秀一。

彼を姿を見ると、涙が溢れた。

メイクが崩れないよう、涙がこぼれるのを必死に我慢しながらヴァージンロードを一歩ずつ前に進む。


赤井さんは手を差し出しながら、優しく笑った。


「綺麗だ」

「っ…こんなサプライズ、聞いてない」

「言ったらサプライズじゃなくなるだろ？
泣くな。」

「だって…嬉しすぎて…こんな…っ」

「ほら。永遠を誓おう。
世界一愛しい俺の花嫁さん？」


ズルいよ…
もう一生あなたの虜だ。

わたしは赤井さんの腕に手を回し、2人で揃って牧師さんの前に立った。

読み上げられる聖書の内容はどこかで聞いたことのあるような言葉が並んでいて、まるで映画みたいで現実感がない。

横目でチラリと赤井さんを見ると、彼は真っ直ぐに前を見て聖書の言葉に耳を傾けている。
その横顔が物凄く美しくて、わたしは息を呑んだ。

この人と、今結婚式を挙げてるんだ…

なんて、まだ夢の中にいるみたい。