【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第81章 恋人じゃなくなった日 ☆
タクシーが到着したのは、オーシャンビューの邸宅。
まるで貴族の別荘のような立派な建物だ。
ハワイというよりヨーロッパ風で、まるでセレブが集う何かのセレモニーが開催されそうな、そんな雰囲気の。
「ここで天体観測するの?」
タクシーを降りたわたしはそう赤井さんに尋ねると、赤井さんが返事をする前に向こうからスーツを着た女性が3人やって来た。
「お待ちしておりました。
赤井様、桜井様ですね。」
「はい。今日はよろしくお願いします」
赤井さんがそう返事をするや否や、その女性は2人がかりでわたしの左右の腕をガシッとホールドした。
「ん???え???」
「サラ。その方達に手出しするなよ」
習性なのか、思わず身体を捻って抜け出し、蹴りを入れようと思ったわたしを予め赤井さんが静止した。
まるで囚われた宇宙人のように腕を掴まれたまま目を点にして赤井さんを見るわたし。
そんなわたしを、左右の腕を掴んでいる女性2名が引っ張る。
「さあ、こちらへどうぞ」
「は??ちょっと!あ、赤井さん?!」
状況が何一つ飲み込めないわたしは赤井さんに向かって必死に手を伸ばすけど、赤井さんは平然とした顔でヒラヒラと手を振る。
「ど、どうなってるのぉおーー?!?!」
引き摺られて拐われながら、わたしの雄叫びが周辺に響いていた。
*
*
「はい。ここに座ってください」
「ここ?」
わけもわからないまま連れてこられたのは、立派なドレッサーが置いてある小部屋。
眩しいぐらいの女優ライトに目の前に並べられたメイク用品の数々。
困惑するわたしに、テキパキとケープを掛け、前髪をピンで止めるその方達。
1人は手に化粧水を塗り、もう1人はコテをコンセントに刺して準備を始めた。
「あ、あの…これは一体…」
「メイクはどういう感じがお好みですか?」
全然話通じない!!
どうやらわたしは今からこの人たちにヘアメイクを施されるらしい。
なぜ…天体観測にヘアメイク…
困惑は解決することなく深まっていく。