【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第76章 それを愛と呼ぶなら ☆
赤井さんが帰宅するまでに、わたしは自分に暗示をかけた。
別に、赤井さんが今まで誰と付き合ってようが関係ない。
勝手にわたしは特別なんじゃ?なんて、勘違いして自惚れた自分が悪い。
そもそも、わたし赤井さんのこと忘れちゃってるんだよ?
彼と今までどんな時間を過ごしてきたのか、どんな場所に2人で行ったのか、どんな言葉を彼がくれたのか。
何一つ、覚えていないくせに嫉妬するなんて傲慢にもほどがある。
そこまで思ってふと我に帰る。
嫉妬って…
わたし、赤井さんのこと好き…?なの?
そう考えていたとき、家の玄関の鍵が開く音がした。
このタイミングで赤井さんが帰ってきたのだ。
「と、とにかく忘れよう。平常心、平常心。
好きじゃない好きじゃない」
なんて無機質な言葉で自分に暗示をかけ、赤井さんを出迎えた。
ただいま。と言って朝出かけたぶりに会う彼を見て、無条件に胸が鳴った。
そしてそれは、帰ってきてご飯を一緒に食べた後も続いている。
お風呂を先にいただいたわたしは、アイスを食べながらTVを眺めてた。
すると、わたしが座るソファーの後ろからお風呂上がりの赤井さんの声がした。
「何を見てるんだ?」
「あ…つけてただけで見てなかったよ」
そう言ってテレビの電源を切ろうとチャンネルを手に取ったとき、流れていた番組が記憶喪失のドキュメンタリーだということに気づいた。
ぼんやりとそれを眺めて、思わず思ったことが口をついて出てきた。
「どうやったら、赤井さんのこと思い出せるんだろ…」
赤井さんはわたしが座るソファーの上、隣に腰を下ろすと優しく言った。
「焦る必要はない。」
落ち着いたその声に、またわたしの胸がトクンと高鳴る。
そして、加速する。
思い出したいと焦る気持ちが、更に。
もうショック療法でもなんでもいい。
赤井さんのこと、全部思い出す方法はないのかな…