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【R18】You belong with me 【赤井秀一】

第75章 オレンジ




赤井side


水族館、プラネタリウムと周り、外に出るとちょうど夕暮れ時だ。

ここまで、何一つ思い出す気配のないサラに、俺は一縷の望みをかけて尋ねた。


「観覧車に乗らないか?」

「観覧車?いいね!乗りたい!」


何も知らずに乗り気なサラの手を引き、俺は観覧車の入場ゲートをくぐった。

ゴンドラに乗り込むと、サラはソワソワと周りを見渡しては、可愛い顔ではにかむ。


「なんか、ドキドキするね」


頼む。思い出してくれ。
別れた日でも、指輪を贈った日でもどちらでもいい。

俺との思い出を、無かったことにしないでくれ…


何度もそう願いながら、はしゃぐサラの姿を見つめていた。


「ねえ、見て!綺麗なオレンジ色だね!」

「…」

「わたし、ここの観覧車初めて乗ったよー!
街が全部オレンジに染まって綺麗!」


屈託なく、楽しそうに目を細めるサラ。

ああ…やっぱり、お前の記憶の中に俺はいないんだ。


まるで、初めて見るように綺麗だと言ったその景色は、別れた時は怖かったと言ってたんだ。

そして、また結ばれて指輪を贈った日は、1番綺麗に見えたと言っていた。

覚えていないのか?
俺はお前の一挙一動、すべて覚えているのに。

あの日確かに俺とお前はここにいたのに。

ここから、同じ景色を2人で眺めたはずなのに。


気づけば、俺の視界が歪んだ。
そして頬に温かい涙が一筋こぼれ落ちた。


「…赤井さん?」

「…っ…無理だ…」

「え?」

「俺が今まで見てきた、あの時も、あの日も、あの瞬間も、全部、たしかにお前がいたのに…お前と一緒に過ごしたのに…
お前の記憶の中に、俺はいない。」

「赤井さん…」


「辛い…」


思わず本音が口を突いて出た。


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