【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第75章 オレンジ
ずっと辛かった。
サラが攫われて、居ても立っても居られないのに何も出来ず、ようやく見つけた時には最愛の恋人は最悪の状況。
家族じゃないからICUには入れないと言われ、どうしてサラとの結婚を先延ばしにしてしまったんだと心底後悔もした。
そして、ようやく目を覚まして俺を見た瞬間のサラの表情が頭にこびりついて離れない。
大好きで愛しくてたまらない女が、俺を見て「初めまして」と言ったんだ。
ずっと、辛くて苦しくて、息をするのもやっとだ。
こんなに弱い人間じゃ無かったはずなのに、サラを前にすると俺は無力になる。
涙が一筋、また一筋と溢れては頬を濡らして膝の上に落ちた。
最悪だ。まさかサラの前でこんな風に情けなく泣くとはな…
自分自身が嫌になりそうだと思った瞬間、俺の身体はサラの匂いに包まれた。
気がつくとサラが、俺よりもずっと細くて小さくて華奢な身体で、俺のことを力いっぱい抱きしめてくれていた。
サラの髪の匂いを嗅いだとき、俺の目から涙がまた溢れた。
好きだ…好きなのに
*
*
赤井さんのイメージは、クールでポーカーフェイスで、力強くて、少しのことでは動じなさそう。
どちらかというと、感情を表に出さないタイプの人間だと勝手に思ってた。
けど、目の前で涙をこぼす彼を見て思った。
男の人って、こんな風に泣くんだ…
こんな綺麗に泣くんだ…
そう思った瞬間、わたしの身体は勝手に動いて、赤井さんを力一杯抱きしめていた。
どうしてだかわからないけど、目の前で肩を震わせて泣いてる赤井さんが愛しくてたまらなかった。
思い出してあげたい。
思い出したい。この人のことを。
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