【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第75章 オレンジ
赤井side
そして次の日になり、俺とサラは2人で米花水族館を訪れた。
沖矢昴の姿ではなく赤井秀一の姿で外に出るのは、サラが事故に遭ったと連絡を受けたあの日以来だ。
あの日は、変装する余裕も時間もなく、大慌てで病院へと向かった。
あれからもう1ヶ月。
俺の記憶を無くしたこと以外はすっかり元の生活に戻っているサラは、隣で目を輝かせながら水槽を眺めている。
「ねえ、サメと一緒にあんな小さい魚も泳いでるよ?食べられちゃったらどうするんだろう」
別れたあの日とおんなじことを言うサラ。
やっぱり、俺とここに来たことは全く覚えていないのか…
サラが屈託の無い笑顔でそう言っているのを見れば見るほど、俺の心はどうしようもなく痛くなる。
サラの中に俺がいないと言うことを、またひとつまたひとつと思い知らされるからだ。
「あ、向こうにペンギンもいるらしいよ!いこ?」
そう言いながら、今見ていた水槽を離れてペンギンを見に行こうとするサラ。
よく見たら少し足を引きずっている。
「サラ」
「ん?なーに?」
「足、どうした?」
そう尋ねると、サラは少し言いづらそうに下を向いた。
「あ…ちょっと靴擦れ…でも大丈夫だよ!
ほら、次行こう?」
痛いくせに、俺が気にしないようにと笑って俺を手招きするサラ。
いつもなら、足が痛いと甘えながら俺に寄りかかるくせに。
歯がゆい気持ちを押し殺しながら、俺はサラの手を取った。
こんな風に手を繋いで歩くのは久しぶりだな…
「赤井さん?」
「痛いなら、無理をするな。」
「1人で歩けるよ」
遠慮して手を離そうとするサラ。
俺はそれを阻止するように、一層強い力でサラの手をぎゅっと握った。
「行くぞ」
離すことを許さず、俺はサラの手を握ったまま歩き出した。
しばらくして遠慮がちに握り返してきたサラの手が少し震えていた気がして、一層愛しさが増した。
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