【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第74章 届かないから
赤井side
ソファーで隣同士に座った時、サラは居心地が悪そうに少しずつ俺から距離をとろうとする。
1ミリ、1センチと身体が離れていくにつれ、サラの表情は穏やかになっていき、俺の心は搾り取られていくような感覚がした。
あぁ、もう以前のように俺にくっついて離れようとしないサラはいないのか。
そう思うと、鉛を喉の奥に詰められたように鼻の奥がツンとした。
それを悟られないように、ホラーが苦手なサラを揶揄って無理やり隣に座らせた俺。
そしてサラがテレビに驚いた拍子に、俺の腕の中に飛びついてきた。
なんだか、随分久しぶりな気がした。
最後にサラを抱きしめたのは、確か俺がサラを庇って撃たれて病院に運ばれた時。
あの時は、まさか今こんなことになるとは夢にも思っていなかった。
鼻に香る甘い香りも、体温も、声も、赤くなった顔も、何も変わっていないのに…
もう少しだけこのまま。
そう言って我儘に抱き締めると、サラは身体を硬くしながらも俺の胸に身を預けた。
ほんの少し前までは、ここから耳元で好きだと囁いたら、お前も「わたしも好きだよ」と言って、唇を重ねて、愛してるを言う代わりに身体を重ねていた。
今じゃ無理やり抱き締めるのが精一杯なんて、泣けてくるな。
なあ…どうしたら思い出してもらえる?
どうすれば、また俺のことを抱きしめ返してくれるようになる?
こんな風に抱きしめていても、もどかしいほど伝わらない。
こんなことになっても、変わらず毎日膨らんでいくお前への気持ちはどうしたらいい?
しばらくして、そろそろいたたまれなくなったのか、サラがゆっくりと身体を離した。
「ち、近い…です」
「いや、遠いよ」
お前が遠くて、手を伸ばしても心を掴めない。
遠いんだよ…
遠いの真意がわからないサラは、何言ってるの?と笑いながらあっさりと俺の腕の中から離れて行った。
俺が贈った指輪だけが、サラのそばで輝いているみたいだ。
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