【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第74章 届かないから
そう言いながらソファーに置いてあるクッションを抱いて、目隠しに使おうとするわたし。
それを、赤井さんは横からひょいっと取り上げた。
「怖くないなら、これは要らないな」
「っ!」
クッションで遮られていた視界が開け、すぐ目の前に赤井さんの顔がある。
その綺麗な顔にある宝石のような瞳と目が合い、吸い込まれそうになりながら思う。
こんなにかっこいい人と、わたしは恋人同士で一緒に住んでたの…?
そもそもわたし、何でここに住んでるんだっけ…
優作さんが借りてくれて…
あれ?優作さんと知り合ったのはどうしてだっけ
ジョディさんや、キャメルさんと知り合ったのは…?
諜報員を辞めて、日本に来て…そこからわたしどうやって生活してきたんだっけ…
ダメだ。何気ない日常は覚えているのに、肝心なところになると記憶が朧げになる。
そのとき
TVの画面が突然切り替わり、画面いっぱいのゾンビと大きな音が響いた。
「っきゃああ!!」
驚きで思わず悲鳴を上げたわたしは、咄嗟に目の前にいた赤井さんに抱きついた。
逞しい体躯にふわっとタバコの匂いが薫る。
そしてふと我に帰る。
「っ…は!ご、ごめんなさ…」
謝りながら離れようとしたわたしを、それよりもっと力強い腕が引き戻した。
また、赤井さんの腕の中に顔を埋めて、自分の心臓の音が頭の中に響いてる。
わたしが自分の腕の中にいるのを確かめるかのように、赤井さんはぎゅっ…と抱き締める力を強めた。
「…あの…」
「もう少し」
「え?」
「もう少しだけ、このまま…」
まるで噛み締めるみたいにそう言って、わたしの髪に顔を埋めた赤井さん。
トクントクンと心臓の鼓動が速くなるに連れて気づいたことがある。
あぁ、この心臓の音はわたしだけじゃない。
彼の音も混じってた。
*
*