【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第74章 届かないから
赤井さんのその問いに、わたしが返事をする前に腹の虫が代わりに答えた。
ぐるるるる…
盛大なその音を聞いて、赤井さんは優しく笑ってわたしの頭をぽんぽんと撫でる。
「召し上がれ」
「…っ…」
見る見るうちに、自分の顔が赤くなっていくのが鏡を見なくてもわかる。
だって、恋人でもない男の人にこんな風に頭を撫でられるのってそうそうなくない?
いや、恋人…らしいんだけどわたしは覚えてないんだもん…
「こういうの、困ります…」
「あぁ。すまない。つい」
恥ずかしさと気まずさで、困る。と伝えると、赤井さんはわたしの頭を撫でていた手をパッと離した。
困ると言ったくせに、離される時妙に寂しい気持ちになったわたしは、一体何がしたいんだろう。
「ほら、冷めないうちに食べてくれ」
「…じゃあ、お言葉に甘えていただきます」
赤井さんに促され、食卓について彼が並べてくれた朝食を目にする。
クロワッサンにスクランブエッグ、ベーコン、サラダがワンプレートに盛り付けてあって、美味しそうだ。
それらを口に運ぶと見た目通り味も美味しく、思わず声が漏れた。
「んっ…美味しいー!」
「ふ…それはよかった」
赤井さんは優しく笑って、向かいの席からわたしを眺めてる。
その笑顔も、困る…
思わず胸がギュッと締め付けられるような、曇りのない真っ直ぐな笑顔
わたし、あなたのこと忘れてるんだよ?
どれほど濃い関係だったか?すら、見当もつかないけど…
そんな風に愛しそうに微笑まれると、罪悪感で潰されそうになる。
彼に優しくされるほど、自分が思い出せないことがものすごく悪いことをしているような、そんな気分になるんだよ…
ふと右手の薬指を見ると、誰にもらったかもわからない指輪が光ってる。
何故かお守りみたいに無意識に右手薬指につけた指輪。
これも、赤井さんがくれたものなんだろうか…
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