【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第74章 届かないから
そして中からもう一つ顔が。
そう、昨日からここで一緒に住むことになった、いや正しくは以前から同棲していたらしい、しかもわたしの恋人らしい赤井秀一だ。
「赤井さん?!なんで…」
驚くわたしをよそに、赤井さんはハイネックの下につけていたチョーカーのような機械のボタンを押す。
すると、先程の声とは打って変わり、赤井秀一の声で話し始めた。
「俺は普段、先ほどの仮の姿で沖矢昴と言う偽名で生活している。
対外的には、赤井秀一は死んだ人間ということになっているからな」
「そ…うなの…」
「…本当に、何も覚えていないんだな」
そう言うと、赤井さんはまたあの表情を見せた。
寂しくて、切なさがいっぱい詰まった表情を。
その顔を見ると、わたしの心がズキンと痛んだ。
それを誤魔化すみたいに、わたしは無駄に明るいトーンで話を戻す。
「そ、それにしても声も顔も全くの別人だったから驚いたよ!」
「まぁ、簡単にバレるようでは変装の意味が無いからな。
朝食、クロワッサンを焼いておいた。
食べるか?」