【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第72章 黒く、暗く
女性医師は、以前俺の腕の処置を担当していた、萩原という女医だった。
「救命の萩原です。シニアドクターが次のオペに向かいましたので、わたしからご説明します。
頭部外傷による硬膜下血腫。
あと、右肩に銃で撃たれたような傷がありました。
いずれも、オペ自体は成功しました。」
「良かった…秀!」
「あぁ…」
オペは成功した
その一言に安堵したのも束の間、萩原医師から残酷な現実が告げられる。
「ですが、意識を取り戻すまでは予断を許さない状況です。
このままICUに入ってもらいます。
ご家族の方は?」
その言葉を聞いて、俺は一瞬時間が止まった。
つまり、オペは成功したがこの後どうなるかはまだわからないということか。
そして、家族…
俺は珍しく回らない頭で返事をした。
「…家族は、いません。
彼女は両親を幼い頃になくし、兄弟もいません。
私が付き添います。」
そう言うと、萩原医師は困ったように眉を下げて言う。
「申し訳ございません。
集中治療室へはご家族以外の面会はお断りしています。
病状が変わりましたら、こちらからご連絡いたしますので…」
「…それまでは、顔を見ることも出来ないということか」
「申し訳ございません…」
俺は、サラの家族じゃない
家族じゃなければ、手を握ってやることすらも出来ないのか…
そんな残酷な事実に、俺は放心状態のまま集中治療室へと向かった。