第71章 GIN

ジェーンは何も言わず、何も動じずに、世界で一番恨むべき男の唇と舌を受け入れる。

口づけの後、俺は言った。


「お前を殺してやるよ」

「え…」

「俺が飼い殺してやる」


そして、飲み掛けの酒をカウンターに置いたまま、俺はジェーンの手を引いてホテルのエレベーターへと乗り込んだ。


エレベーターが到着した40階にある一室。
ジェーンの手を引いて部屋の中に入ると、俺は入ってすぐの場所で、ジェーンの首に手をかけて壁に押し付けた。


このまま、こいつを殺すことは簡単なはずなのに、どうしてか今の俺の身体はそれを嫌がっているらしい。

まるであの時のように。

ジェーンは首に手をかけられても動じず、それどころか殺してくれると言う期待に満ちた目をした。


「お前は、変な女だな」

「あなたも相当変な男だよ…」

「暇つぶしぐらいにはなりそうだ」


そう言って、俺はまたジェーンの唇を奪った。

暇つぶし

そんな言葉で誤魔化して、そのまま舌を絡めながらジェーンの太ももに手を這わせた。
そしてショーツを掴み、下にずり下げて指で秘部を確認した。


少しだけ濡れていたことに、俺の凍った心が少し軋んだ。

そしてそのまま、愛撫もせずに俺はジェーンの中に、猛った自分の欲望を突き立てた。


「い…た…」


痛い。と顔を歪ませるジェーンの身体を乱暴に弄りながら、こいつの中に入っている時間を至福だと感じてしまう。

そして今気付いたことがある。
人を殺す方法は何通りも知っているが、愛し方はひとつも知らなかった。

たったひとつも、知らなかった。


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