【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第71章 GIN
その名前を呼ぶと、女はゆっくりとこちらを見た。
そして俺の冷たい瞳をじっと覗いてくる。
「名前、知ってるの…?」
「お前は興味深い存在だからな。」
そう言うと、女はフッと笑った。
あの頃の眩しいぐらいの笑顔の面影はどこにもなかった。
「わたしもあなたのこと、知ってる。
わたしをよく指名してくれる、ジンでしょ?」
俺はふ…と笑ってタバコに火をつけた。
「お前は仕事が速いからな」
ジェーンを指名しているのはそれが理由じゃない。
けれど、本当のことを言ったら、こいつはもう2度と俺の前に現れなくなる。
そう思った俺は、咄嗟に、嘘をついた。
すると、ジェーンはまっすぐな瞳で俺の顔を観察してくる。
その目に見られると、俺が今ついた嘘を全て見抜かれてしまいそうな気がして、俺は懐から拳銃を取り出すとジェーンの額に向けた。
そして次にジェーンからこぼれた言葉は、俺の想像を超えていた。
「…あなたなら、わたしのこと、殺してくれる?」
そう尋ねてきたジェーン。
俺は10年前、お前を殺せなかった。
そんなことはひた隠しにして、銃を下ろしながら言う。
「悪いが、殺してくれと言われると、殺したくなくなる性分なんだ。」
「…ずいぶん偏屈なんだね」
そうしてまた、ふ…と眉を下げて笑うジェーン。
今のお前の目は、俺によく似ている。
あの日、公園で初めて出会った頃は、正反対だったはずだが、今は同じ目をしている。
お前は、これまでどうやって生きてきた?
俺が奪った未来を、暗闇の人生を、どう歩いてきた?
絶望したか?
俺を恨んでいるか?
聞きたいことは何一つ聞けずに、けれどこの女をここで帰したくない。そう思った俺は、
「気に入った。」
そう言いながらジェーンの唇を乱暴に奪った。