【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第71章 GIN
靴を脱ぐのも忘れ、慌ててやり損ねた奴を殺さなければ。とまた寝室へと急いだ。
コツ。コツと靴音を鳴らしながら、ドアを開けると中には誰もいない。
気のせいか…
そう思いながらまた部屋を出ようとしたとき
部屋のチェストボードに置いてある写真が、雷の光に照らされた。
その写真を俺は目を見開きながら凝視する。
「こいつ…」
俺がたった今、殺した人間の間には、昼間に俺が助けた少女が屈託のないあの笑顔で笑っていた。
名前は確か、サラ。
あいつの両親だったのか
カタンっ…
その時、部屋のクローゼットから物音が聞こえた。
そうか、きっとあそこに隠れているんだな。
あいつも、殺さなければ。
そう思った時、なぜか
「ヒーローでしょ?」
そう言って笑う少女の顔が頭を覆い尽くす。
殺さないと。
そう思うのに、俺の足はコツコツと靴音を立てて玄関の方へと向いている。
そして俺は、玄関ドアを開けて外に出ると一目散に走った。
俺が殺したのは、あの子の両親
俺が奪ったものは、2人の人間の命だけではなく
たった1人の子供の両親、人生、笑顔、未来
人が生きていくために必要なもの全てをこの手で奪った。
俺はその一件で、組織の中枢に一気に上り詰めた。
この初めての殺しで感じた違和感や流した涙は、殺しをまたひとつ、またひとつと重ねるたびに薄らいで今はもう命を奪うことに対して何の躊躇いも持たなくなった。
そして、俺がもう二度と会わないと思っていたその少女に再会するのは、それから10年後のことだった。
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