第70章 悪魔の再会　☆

が、呆気なくジンにそれをガードされる。


ギリ…とナイフを持つわたしの腕を捻り上げながら、ジンがわたしを睨んだ。


「どうした…」

「？！」

「ジェーン。何を躊躇うことがある」


その言葉に、わたしは思わず目を見開いた。

躊躇ってる…？わたしが？！
そんなわけ無い。
ずっと探していた憎むべき相手、両親の仇。

なのに、ナイフを持つわたしの手は震えていた。


「…っ…」

「俺は、お前の大事な両親を手にかけた男だ。
今、目の前にいる。こんな絶好のチャンスは他にない」


まるで、わたしに殺しをさせたがっているようなジンの挑発。
けれどわたしはナイフを握る手の力をフッと抜いた。


「っ…殺せない…」

「…なんだと」

「殺してやるって思ってた…
パパとママをあんな目に合わせた人間を見つけて、同じ目に合わせてやるって思ってた。
…けど…だけど！」


目を閉じると涙が溢れた。
そして、脳裏に浮かんだのは赤井さんの優しい顔だった。


「わたしがそれをすると、悲しむ人がいる。
その人を、絶望させたくない…」


赤井さんが、やめておけと言ってるように思えて、その瞬間ナイフが床にカランと落ちた。


そんなわたしの様子を見て、ジンは静かに低い声で言う。


「…お前は、弱くなったな。」

「弱い…？」

「ジェーン。以前のお前はもっと強かった。
何にも惑わされない、与えられた任務は必ず遂行する。どんな手を使ってでも。
そんな女だったはずだ。
何がお前を弱くした？」