第70章 悪魔の再会　☆

夢を見た。

赤井さんと一緒に乗った、観覧車。

別れた日じゃなくて、赤井さんに指輪をプレゼントされた時の、あの幸せな日の夢。


赤井さんが、目の前で笑ってる。
わたしをまっすぐ見つめて、好きだと言って、そしてわたしの髪を撫でる。


幸せな夢…

ねえ、このままずっと一緒にいられるよね？

赤井さんの隣で

ずっと2人で。

ねえ？うんって言って？赤井さん…？


赤井さん…



「…っ！！」


目を覚ますと、そこにあったのは赤井さんの笑顔じゃなく、見慣れない天井だった。

どうやらどこかのホテルの一室のようだ。


「ここ…どこ？」


むく…と身体を起こすと気付いた。
わたしはバスローブに着替えさせられた状態で、ホテルのベッドの上に寝かされていた。

ハッと右手の薬指を確認すると、赤井さんからもらった指輪はちゃんとある。
それだけで、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。
よく見たら両手首と両足首はガムテープで固定されていて、ここから動けそうもない。

そんな状況を理解したわたしに、最悪の展開が待っていた。


「お目覚めか」


部屋の入口から聞こえてきたその声で、わたしの身体はビクッと大きく震えた。
聞き覚えのあるこの声。
低くて鋭くて、この声を聞くと背筋を氷でなぞられたような寒気がする。

そう、そこにいたのは黒い装束を見に纏い、長い銀色の髪を揺らし、その間からナイフのように鋭い瞳を携えた男。


「ジン…」

「久しぶりだな。ジェーン」


ジンとの、悪魔の再会だった。