第70章 悪魔の再会　☆

考えたくないことが次々と頭の中に浮かんでは消え、おそらくサラがエントランスまで出るのに使ったであろうエレベーター付近まで走ってきた時、俺の名前を呼ぶ声がした。


「赤井さん？」


ハッと振り向くと、そこにいたのはサラではなく、俺の担当の看護師だった。


「ちょうどよかった。
これ、下の階のエレベーター付近に落ちてたんです。
彼女さんのスマホですよね？
ロック画面が、赤井さんだったので…」


そう言って差し出されたのは、確かにサラのスマホだった。

俺はそれをバッと勢いよく受け取ると、その看護師に詰め寄るように尋ねた。


「スマホだけか？拾った場所の周辺に、不審な人物はいなかったか？！」

「いえ…気付いたのはスマホだけですけど…」


「秀！なに？！どうしたのよ！」


俺を追ってきたジョディが息を切らしながら、ただならぬ剣幕の俺に問う。

俺は、一点を見つめたまま一瞬思考が停止しそうになりながらもようやく一言だけ言葉を紡ぐことができた。


「サラが…奴らに攫われた」

「なんですって？！」


俺はこの時、死ぬほど後悔した。
どうして一緒に行かなかったんだと。

運命は時に残酷で、そんな俺を嘲笑うかのように過酷な現実を用意して待っていた…

＊
＊