第65章 恋人はアンドレキャメル！？

赤井さんとキャメルさんのやり取りがとんでもなく平行線で、わたしは少しでも話を進めようと間に入った。


「実は…ドイツに住んでいる私の母親が、明後日に急遽来日することとなりまして…
アンドレの彼女に会わせてくれと…」

「え…？もしかして、彼女がいるって嘘ついてたの？」

「…母は、以前から常々、早く嫁をもらいなさいと私を心配していて…
見合い写真を用意しては私に送ってくるぐらい。
そんな母に心配かけまいと、結婚を前提に付き合っている彼女がいるからと咄嗟に嘘を…」

「あらぁ…」


その話を聞いて、不機嫌そうに眉を顰めた赤井さんは口を挟む。


「それでどうしてサラなんだ。
彼女のフリならジョディに頼めば…」

「それが、お付き合いしているのが日本人だと言ってしまいまして…
オマケに、見た目の特徴も嘘に信憑性を持たせるように、サラさんの特徴を伝えていまして…」

「…キャメル…お前は、何故そんなすぐにバレる嘘を…」

「だ、だって！！
まさか母が来日するとは思っていなかったんですよぉ！
偶然、懸賞で日本旅行が当たったとかで…」


はぁあ…と頭を抱える赤井さんに、ブワッと涙を弾けさせながら弁解するキャメルさん。

当事者のわたしは二人の対比が面白くて思わず笑ってしまいそうになるのを必死に堪えた。


「状況はわかったけど、わたしが彼女のフリして嘘を突き通していいの？
なんならもう別れたって言って、嘘を終わりにした方が…」

「別れたなんて言ったら、きっとまた私を心配してお見合い写真をたくさん送ってくるに違いありません…！
ほんの、１日の数時間…一彼女のふりをして一緒に食事をしてくださるだけでいいんです！
お願いします！！」

「却下」


またもやわたしが返事をするよりも先に赤井さんが却下と返す。
キャメルさんは赤井さんにウルウルと同情をこう眼差しを向けるけれど赤井さんには全く響いていないらしい。