【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第56章 クリスマスソング
射撃勝負はあっけなくわたしの敗北だった。
よく考えたら、現役FBI捜査官と1年以上ブランク有りの元諜報員。
やらなくても結果は見えていたようなものだ。
諜報員を辞めてすぐの頃、トロピカルランドの射的で勝負した時より確実に射撃の腕が落ちていた。
だけどわたしはそこまでショックでは無かった。
これってつまり、戦闘用に調教されたロボットから普通の女の子に近づいているってことだよね?
そう思うとショックどころかほんの少し嬉しいとすら思ってしまった。
負けた直後は悔しさで顰めっ面をしていたわたしも、店を出てマスタングに乗り込んだ頃にはもう機嫌は治っていて、ハンドルを握った赤井さんを笑顔で眺めた。
「楽しかったね!赤井さん!」
「それは良かった。
だが、俺が勝ったこと忘れていないか?」
「…楽しかったね。秀一?」
ついつい赤井さんと癖で呼んでしまうわたしは、慌てて秀一と呼び方を変えるけど、途端に照れて顔が真っ赤になる。
秀一と呼ぶ度に、かああっとみるみる顔が紅潮するわたしを見て、赤井さんは呆れたようにため息をついた。
「そろそろ下の名前で呼ぶのに慣れろよ。
お前が俺と同じ名字になるのはそう遠くないんだから」
「え!そうなの!?」
そんなのずっとずっと先のことだと思っていたわたしは、慌てて赤井さんを見た。
「なんだ?不満か?」
「まったく!1ミリも不満なんてないよ!!
だって、もっと先の話だと思ってた…」
「例の組織のボスの名前も判明したし、時間の問題だな。
だから、今のうちに秀一と呼ぶのに慣れて欲しい」
「了解です!赤井さん!」
「…お前俺の話聞いていたか?」
呆れる赤井さんをよそに、わたしの脳内は自分の苗字が赤井になることでいっぱいだった。