【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第55章 片想い
そうだ。サラを尾行していたことが完全にバレたことに今更気付く。
「…たまたま、偶然」
「えー?!ほんとに?!一人で?」
「あぁ。もちろん一人だ」
と、真顔で嘘をつく俺を睨みながら、サラは向こうを指差して言う。
「あれ、キャメルさんじゃない!?」
ハッと指差す方へ目を向けると、キャメルは物陰に隠れてこちらを見ながら、まるで映画を一本見終わったように片目から溢れる涙をハンカチで押さえている。
「うっ…赤井しゃ…
その辺のラブストーリーよりずっと感動しました!」
そう言いながら、ちーん。と鼻水を噛むキャメル。
さすがのサラでも理解しただろう。
俺が、後輩を引っ張って自分の彼女を終日尾行していたことを。
「赤井さんー?!!」
「………あぁ。
そうだよ?尾行していたが?悪いか??」
フンッとそっぽを向いて開き直る俺を見て、サラが可愛い顔してプリプリ怒った。
「ひ!開き直った!
赤井さん、悪くないって顔して!」
「当たり前だ。元はと言えばお前があの生意気な小僧とデートするなんて言うから」
「それでキャメルさんまで引っ張り出して?」
「あぁ。キャメル。もう帰っていいぞ」
もう用は済んだから。と、なんとも雑な扱いをされたのにも関わらず、キャメルはビッと敬礼した。
「はい!赤井さん、お疲れ様でした!」
そしてサラにぺこりと頭を下げると、ショッピングモールを去っていくキャメル。
「…キャメルさんが気の毒すぎる…」
キャメルの背中を見ながら憐れむサラの手を握り、俺は自分の方へ引いた。
「ほら、帰るぞ」
「…ずるいよね、赤井さん」
「?何が?」
何がずるいのかわからずに首を傾げると、サラはなんでもなーいと言いながら、俺の腕にぎゅっとしがみつく。
そして、何だかとても幸せそうな顔をして言った。
「やっぱり赤井さんの手が一番」
「?」
そんなやり取りをして、2人でショッピングモールの展望台を後にした。