第55章 片想い

すると、突如として橘弓弦の攻めた言葉が耳に飛び込んできた。


「俺のこと、ちゃんと男として見て欲しいっす」


はあ！？！
どさくさに紛れてもうしっかり告白してるじゃないかこいつ…

イライラと苛つきながら、すぐにでもこの2人の席に乗り込んで行ってやろうと思う気持ちを必死に抑えた。

サラは、珍しく大人ぶって返事をする。


「大人をからかっちゃダメだよ。
学校に好きな子とか、いないの？」

「いません。目の前にしか」


が、秒で返り討ちにあった。

告白だろ！どう考えても！
まさかまだ気付いていないんじゃないだろうな？
俺のバカで可愛い彼女は。

さすがに彼の好意を察知したサラは、諭すように言う。


「…あの、わたしあなたより７つも年上のおばさんだよ！？」

「24歳のおばさんなんて、聞いたことありませんよ」

「この間、めでたく25歳になりました。
って、そうじゃなくて！
わたしなんか追いかけてたら勿体無いでしょ？って話をしてるの」


これでどうだ？！という風に、弓弦くんに言ったサラだが、その後すぐに彼から

じゃあサラさんも赤井さんを追いかけてた時間は無駄だったんですか？

と聞かれ、即座にそんなわけないでしょ？！と否定するサラ。

ほらな。と言われた時点で、サラも自分の負けに気付いたらしい。


「と！とにかく、本当に今日だけだからね？」

「わかってますよ。
だから、今日だけはちゃんと好きでいさせてください」


あぁ。もうダメだコレは。
このずる賢いちょっと大きいボウヤに、サラが論破出来るはずもなく。

早く連れて帰りたい…それだけが俺の頭の中に駆け巡った。