第54章 君に届け　☆

1週間後


「サラちゃん。悪いんだけど店の外、掃き掃除してきてくれない？」

「はーい。」


マスターから箒とちりとりを受け取り、わたしは店の外に出た。
鼻歌を歌いながら、店の前を掃除していると後ろから誰かに名前を呼ばれ、はっと振り返った。


「サラさん」

「？…弓弦くん！」


そこに立っていたのは、この間英語を教えてあげた弓弦くんだった。


「…満点、とりました」


そう言って弓弦くんがずいっと見せてきたのは、100点満点の英語の答案用紙だ。


「え…ぇええ！すごい！！頑張ったねえ！」


思わずハイテンションで喜びながら、答案用紙を受け取って中身を見ていると、弓弦くんが口を開く。



「…ご褒美、なんでもいいっすか？」


「うん！あ、でも現金100万円とかはやめてね？」


流石に大丈夫だろうと思いつつも、念のため…

そんなわたしの心配はどうやら的外れだったらしい。
弓弦くんから飛び出したのは、わたしが一瞬たりとも想像もしなかった要求だった。


「俺と、デートしてください」

「……え？？で、デートって…デート？」

「はい。サラさんとデートしたいです」


デートってことは、これはもしかしてわたしに少なからず好意があるってこと…？

それとも、わたしをからかってる？
年上の女を落とせるか落とせないか、賭けでもしてるんじゃ…


そう思いながら、わたしは弓弦くんに言う。


「や…あの、さすがにデートはちょっと…」


赤井さんに知られたら、殺される(弓弦くんが)

それに、わたしは赤井さんが一生大好きだから、もし弓弦くんが好意を寄せてくれていても、応えられない。