【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第54章 君に届け ☆
弓弦side
本当は、勉強なんか口実だった。
初めてこの店で、サラさんを見た時、普通に一目惚れだった。
俺はまだ子供で、サラさんは大人だ。
同級生の女子とは違って、落ち着いてる大人の女性に見えた。
だから、さっき、まさか話しかけられるとは思ってなくて、つい照れ隠しでパッと目を逸らした。
弓弦くん。と呼ばれたとき、どうしようもなくドキッとした。
英語を教えて欲しいと苦し紛れの言い訳を考え、今、俺の隣にサラさんが座って長文の和訳をしてくれている。
「…弓弦くん?聞いてる?」
「えっ。あ、聞いてます…」
ずいっと俺の顔を覗き込んでくると、サラさんの丸くて茶色い瞳が俺の視線に重なった。
近くで見ると、さらに可愛い…
それに、なんかいい匂いするし。
俺より年上なのに、当たり前だけど俺の手より小さい手。
これは恋なのか、ただの憧れなのかわからない。
ただ、自分にしては珍しく心臓がうるさい。
「…あっ。もう店閉めなきゃ。また今度ね。」
「ありがとうございました…」
俺は力無く、机に広げた勉強道具を片付けた。
また今度っていつだ…
せっかく初めて話せたのに。
そうは思うも、俺にはサラさんに次の約束を取り付けるほど度胸もなければ、理由もなかった。
会計を済ませて、サラさんと一緒に正面から店を出て鍵をかけた瞬間、通り雨が勢いよく降り出した。
「えー、雨降るのー?」
サラさんが、空を見上げながら肩を落とした。
これは、チャンスかもしれない。
俺はカバンに入れてあった折り畳み傘を取り出して、サラさんの名前を呼んだ。
「サラさん…俺、傘…」
そう話しかけるときにサラさんの顔を見ると、サラさんは驚いた顔をして道路の方を見た。