第52章 Getaway Car 　☆

赤井side


無理やり運転席を奪われたサラは、めちゃくちゃ不機嫌な顔をしている。

レンタカーを返したあと、俺に手を引かれて家に戻ったが、ずっとぶすっと口をとがらせたままだ。


「サラ、機嫌直せよ」

「ひどい赤井さん。わたしせっかく免許とったのに…」


そう言ってサラは自分の免許をじっと見ながらうつむいた。


お前…チワワに気を取られて死にかけたんだぞ…！？

そう怒りたい気持ちをぐっと抑え、俺はサラを抱きしめながら頭を撫でた。


「もし、事故起こしてお前に何かあったらと思うと、正気じゃいられないんだよ。」

「…でも、ちゃんと免許あるもん。事故起こさないもん」

「じゃあ、道にキリンが歩いていたら、お前絶対よそ見してそっちを見るだろう？」

「そりゃみんな見るでしょ！キリン歩いてたら！」

「見ない。」

「見る！」

「見ない」


ああ…俺はもう32だぞ。
何だよこのやりとりは…

はあーっとため息を付きながらどうしたらサラが納得してくれるか必死で考えた。