第52章 Getaway Car 　☆

しばらく走ると、教習所でやった感覚が戻ってきて、運転も安定してきた。


「…どうやら、大丈夫そうだな」

「当たり前でしょ？わたし先生に上手って褒められたんだから〜」

「ホォー」

「赤井さんのあのデスドライブに比べたら、わたしの運転なんて安全そのもの！」


そう言って赤井さんの方をちらっと見た時、赤井さんの向こうにある歩道に可愛いチワワが散歩しているのを見つけた。


「わ！！可愛い！！チワワだ！！」

「おい！！！前！！前見ろ！！」

「へっ？」


赤井さんがいつになく大きい声を出したかと思えば、わたしの運転する車の目の前に脇のお店の駐車場から出ようとしている車が…


「あっ」


呑気にそう声を上げたわたしを見かねて、赤井さんが助手席から素早くハンドルを操作し、激突は免れた。
危うく二人揃って死にかけたわたしたち。
車を脇に止めたまま赤井さんが顔をしかめて言った。



「お前…まさか、教官を誘惑して教習所を卒業したんじゃないだろうな…」

「そ、そんなことするわけないでしょ！？」

「…こいつに免許交付するとか、日本はどうなってるんだ…」

「えっ？なに？なんで？？」

「いい。お前、運転するの絶対禁止だ。変われ」

「えー！！やだ！！」

「やだじゃない！変われ！」

「やーだー！！！」


数分間そんなやりとりを続けた後、結局赤井さんに運転席を奪われ、レンタカーを返し、わたしたちは歩いて帰宅した。