第48章 カブトムシ　☆

その時、赤井さんはわたしの髪を撫でながら驚きの言葉を放つ。



「許さないから、
一生、俺のそばにいろ」


「え…」


「一生、俺の隣にいないと、許さない」

「…なんで…？
だって、ジンは！
…赤井さんの大切な人を殺したんだよ？！」


「その大切な人より、お前の方が大切になったんだよ」


参ったように少し笑いながら、赤井さんがわたしの目を見た。

どうしてこの人はいつもわたしの心を軽くしてくれるんだろう。
土砂降りだった心の中を、一瞬で青空にしてくれる。


「お前と俺が、別れるのはもう一生あり得ない。
お前の過去を丸ごと全部受け入れると決めている。
…自分に価値がないなんて言うな…
俺はお前が世界で一番大切なんだ」

「いいの…？
わたし、赤井さんの隣にいて、いいの？」


泣きながら赤井さんを見た。
赤井さんは、わたしの涙を指で拭うと、笑った。


「当たり前だ。馬鹿…」


思わず、わたしは赤井さんに勢いよく抱きついた。


「サラ…？」

「わたし、赤井さんに何を返せる…？」


考えてもわからない。
こんなにわたしにたくさんの幸せをくれる赤井さんに、わたしは一体何を返せるだろうか。


「一生、俺の隣にいてくれたらそれでいい。」

「そんなの…返してるって言わないよ…」

「お前がいるだけで、幸せなんだ」


赤井さんはそう言いながら、わたしを優しく抱き上げた。