【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第47章 黒い猫の歌 ☆
赤井さんはゆっくりわたしから身体を離すと、頭を撫でながら少しだけ笑った。
「まあいい。
話せるようになったら、話してくれればいい。
…食べよう」
出会って間もない頃も、こんな風にわたしはたくさん隠し事してた。
なかなか本心を話さないわたしに痺れを切らして、赤井さんとよく喧嘩した。
わたしだけだ。何も成長してないのは。
椅子に座って、赤井さんが作る魔法のシチューを口に運んだ。
わたしの大好きな味。
あったかくて、安心する。
赤井さんみたいなシチュー。
わたしは、ボロボロの涙をこぼしながら赤井さんを見た。
「赤井さん…」
「…どうしたんだよ」
「ずっとそばにいて…
わたしのこと、嫌いにならないで…」
それだけ言ってまた俯いて泣いていると、赤井さんはガタ…と立ち上がり、わたしを抱き上げた。
「…っ!?」
そしてゆっくりとソファーに降ろすと、わたしをぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「…お前が、泣き止むまでこうしてる」
「……っ…」
わたしは、赤井さんと出会って変わった。
笑えるようになったし
人と話すのも好きになった。
美味しい、可愛い、楽しい。
いろんな感情も知った。
赤井さんと、この先もずっと一緒にいたい。
あんな忌まわしい過去、忘れたい。
記憶から消して、無かったことにしたい。
タイムマシーンに乗って、あの頃の自分に言ってやりたい。
理由も言わずに泣きじゃくるわたしを、赤井さんはずっと抱きしめて髪を撫でてくれた。
そしてその日は、泣き疲れたわたしの髪を撫でながら、手を繋いで寝かしつけてくれた。
無くしたくない…
そう思いながら、わたしはゆっくりと意識を手放した。