【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第47章 黒い猫の歌 ☆
頭で理解する前に、わたしの心臓が大きく鼓動した。
ドクン…
黒いポルシェ356A
その車種を認識したあと、心臓の音が加速した。
ドクン…ドクン…ドクン
「ジンの…車…」
うわごとのようにぽつりと呟きながら、わたしはその場に立ち尽くした。
同じ車種なだけで、きっと、別人の車だ…
そうに違いない。
必死にそう思いながら心臓を落ち着けようとした時、通りの向こう側に黒い服を着た男が見えた。
わたしは思わずさしていた傘を落とした。
通りの向こう側にいたのは、ジンとウォッカだった。
そしてゆっくりとポルシェ356Aの方へ向かって歩いてくる。
逃げなきゃ…
すくむ足を思い切り殴って、わたしは傘を落としたままずぶ濡れになって走り出した。
走って、走って、走って、路地に入り、右、左、左と逃げるように走った。
ふとジンに撃たれたあの日を思い出す。
嫌だ…
怖い…
殺される…
どうしよう…
わたしは、人通りの少ない路地の脇に、座り込んだ。
ここから下手に動いて、わたしの姿を見られて家を知られたら…
赤井さんやコナンくん、哀ちゃんまで巻き込んでしまう。
わたしは路地の近くにあった小さい公園の、ドーム型の遊具の中に隠れた。
ここで数時間じっとしてよう。
相手は車だし、きっと数時間も経てば遠くに行くだろう。
それまで…
ガクガクと震える身体を抱きしめながら、わたしは静かに時が過ぎるのをじっと待っていた。