第45章 A Whole New World ☆

水上ショーが終わり、わたしたちはゴンドラ運河の見えるレストランで夕食をとった。


「なんか、ヨーロッパみたいだね。
日本じゃないみたい」

「お前、イタリアに行きたいって言ってたな」

「うん。任務で色んなところ行ったけど、イタリアはまだ一度も行ったことないの」

「へぇ。」

「ローマの休日って映画が大好きで、いつか絶対行きたいと思ってるんだ。」


そんな他愛ない話をしながら夕食を終えた。

店を出て、もう帰るものだと思い、わたしがゲートの方へ歩き出そうとすると、赤井さんが腕を引いた。


「ひとつ、行きたいところがある」

「？」


珍しいな。
赤井さん、早く帰りたいって言ってたのに。

そう思いながらも大人しく着いて行った先は、大きな船の展望デッキ。


「わ…！すごい。きれい…！」


見ると、ネズミーシーの夜景が目の前に広がっている。

テーマパークならではのライトアップに、わたしは心が踊った。

その隣で、赤井さんがわたしの肩を抱き寄せながら言う。


「今日、秀吉にお前を会わせることが出来て、良かったよ」

「わたしも。会えてよかった！
…なんか、赤井さんにとって、特別みたいで嬉しかった。」


わたしを、彼女として家族に紹介してくれたのが、嬉しかった。
すごく。

幸せが溢れて思わず笑みを漏らすと、赤井さんはわたしを抱き寄せながら呆れた声で言った。

「特別みたい。じゃなくて、特別なんだよ」

「え…」

「自分の恋人を、家族に紹介したのはお前が初めてだ。」


そんなの、嬉しすぎて泣きそうになる。
綺麗な夜景が、涙で滲んでぼやけた。