第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
2階のシラユキの部屋に向かうと、ミドリがいた。
「……………」
「ミドリ、何してるの?」
「あ、クロサキちゃん…。明日、みんなで帰るでしょ?…シラユキさんの荷物まとめてるの」
「(忙しそうだし、あとでまた来よう。)」
邪魔にならないようにシラユキの部屋を出る。再び1階に降りてリビングに向かう。
「(…カナザワとアオキ?何を話してるのかしら?)」
二人の会話が気になり、少し立ち聞きすることにした。
「…アオキ。ちょっと聞きたいことあんだけどよ」
「…なんだ、コソコソ周りを気にして」
「…あのよ、盗撮って、バレたら捕まるのか?」
「お前は何を言ってるんだ?盗撮したのか…!?貴様…」
「ち…ちげえって!!!!知り合いに相談されたんだよ…はは」
「…そうだな、わいせつ事件は被害者次第だ、示談で済むこともある」
「あ?示談ってなんだ?」
「裁判手続きをせずに当事者同士で話をつけることだ…」
「な、なるほどな…!」
「で、盗撮被害者は何て言ってるんだ?」
「あ、いや…口が聞けないんだよ…ははは!」
「………?」
「(カナザワの奴、私がバラすとでも思ってんのかしら。それはさておき、少し勉強になった気がする。)」
アオキから示談の話を盗み聞きし、静かにその場を離れた。私はスミレの部屋を訪ねる。
「スミレ、今いい?」
「忙しいから出てって。あー…もう…これも、これもアウト?」
スミレはイライラしながらスマホをずっと触っている。とても話を聞いてくれそうにない。とばっちりを受けたくないので早急に立ち去り、次はバルコニーに向かう。
「(アオキが何か手に持ってるわね…?)」
私はアオキに近づいた。
「アオキ、こんなところで何してるの?」
「あぁ…この荒んだコテージに、きれいに花が咲いていたからさ」
「…そ、そう。」
「花は美しいな。美しいものは、なんでも俺のものにしたい」
「…それ、何の花なの?」
「しとやかなスミレの花だ。…あいつとは似ても似つかないな?はは。」
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